関節液
今回も「膝の荒野」編をお届けします。
この荒野編シリーズはぜひ、プリントアウトして保存しておく事をお薦めします。
さて、今週は「関節液」についての特集です。
世間で言われているいわゆる「水」です。
水はたまる(溜まる)けどお金はたまらない(貯まらない)!
時に外来で交わされる笑えないジョークです(苦笑)。
でも、この関節液(水)について正しい知識を持っている方は殆どいません。
じっくりガイドしますのでよく読んで下さいね。
関節液(水)はどこで作られる?
そもそも関節液とはどこで作られるのでしょうか?
関節には関節包(かんせつほう)という袋があります。
その関節包の内側を覆っている「滑膜(かつまく)」という組織があります。
この滑膜(かつまく)で関節液が作られています。滑膜で作られているので関節液のことを別名「滑液(かつえき)」と言います。
関節液の役割は?
関節液には2つの大切な役割があります。
▼「潤滑液(じゅんかつえき)」の役割!
関節液は透明で粘り気がある液体で、ヒアルロン酸やたんぱく質を含んでいます。
このヒアルロン酸とたんぱく質の複合体が関節軟骨の表面を覆って、関節がスムーズに動けるように潤滑液の働きをしているのです。
「関節液」=「潤滑油」のようなものです。
▼関節軟骨に「栄養」を与える!
じつは、関節軟骨には血管が通っていません。
ですから、関節軟骨は血液から栄養を取り込むことは出来ません。
そこで、関節液の出番です。
滑膜で作られた関節液は関節軟骨に栄養を与えています。
通常、正常な膝関節には関節液は数ccしかありませんが、これが膝の動きを滑らかにして栄養を与えているのです。
滑膜(かつまく)の働きは?
さて、関節液は滑膜で作られるとガイドしました。
でも、ただ単に関節液を作っているだけではありません。
精巧な働きがあるのです。
それは関節軟骨の代謝*に必要な物質の出し入れする働きです。
*代謝:物質を合成したり分解したりすること。
では、滑膜の働きをわかりやすいように図で示しましょう。
・滑膜が血液から栄養を取り込みます。
↓
・関節液を作ります。
↓
・関節液を放出して関節軟骨に栄養を与えます。
↓
・古くなった関節液を吸収して、関節液量のバランスをとります。
どうして関節液がたまるの?!
では、なぜ水がたまるのでしょうか?
滑膜は関節液量のバランスをとっています。
ですから。
関節液の排出 > 関節液の吸収
この関係になると当然、関節液はたまってしまいます。
滑膜が何らかの刺激を受けると、関節液を吸収する以上に多量の関節液を排出してしまいます。
そして、一度水がたまってしまうとそれ自体が滑膜を刺激してしまい、さらに関節液が増えて、痛みや熱感などの炎症症状が続いてしまいます。
まさに、「悪循環(あくじゅんかん)」です。
この悪循環を断ち切るのが、関節液を注射器で抜く「関節穿刺(かんせつせんし)」です。
これについては次回ガイドします。
水を抜くと「クセ」になる?
患者さんからよく聞く質問がこれです。
一度水を抜くと、「クセになって」またたまってしまうのではないですか?
これは一体誰が最初に言ったのでしょうか?
「みのもんた」さんでしょうか?(苦笑)。
でも良く考えてみればわかりますよね。
「抜くからたまる」のであれば誰も抜きません。←キッパリ!
繰り返しますが、滑膜が刺激されて炎症が起きて、吸収する以上に関節液が多量に産出されて水がたまってしまいます。
ですから、水を抜いてもたまり続ける事があるのは「クセ」になるのではなく、水がたまる「原因が解消されていない」からたまるのです。
一度水を抜いただけで、関節の炎症が全ておさまる訳ではありません。
ですから水を抜く事が何度か必要な事はあるのですね。
今回のガイドはこれでおしまいです。
次回は関節内注射(関節穿刺)について詳しくガイドします。
実際に医療現場では
・どのような目的で注射(穿刺)をしているのでしょうか?
・その注射の内容は?
・利点と欠点とは?
わかりやすくガイドします。
今シリーズの「膝の荒野」編はぜひ欠かさずお読み下さい。
教科書には書いていない素朴な疑問Q&Aシリーズも特集で組む予定です。
さらには軟骨に効くといわれる「サプリメント」についても。。。
ただいま準備中~。
お・た・の・し・み・に~